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Japanische Klassiker mit Furigana

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みなかみきこう

みなかみ紀行

若山 牧水

Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme

Aozora Bunko

十月廿七日。

心細く待ち焦れていると、急に鋭く屋根を打つ雨の音を聞いた。先程の月の光の浸み込んでいる頭に、この気まぐれな山の時雨がいかにも異様に、侘しく響いた。雨の音と、ツイ縁側のさきを流れている渓川の音とに耳を澄ましているところへぐしょ濡れになって十二と八歳の兄と妹とが帰って来た。そして兄はその濡れた羽織の蔭からさも手柄顔に大きな壜を取出して私に渡した。

十月廿七日。

宿屋に酒の無かった事や、月は射しながら烈しい雨の降った事がひどく私を寂しがらせた。そして案内人を雇うこと、明日の夜泊る丸沼の番人への土産でもあり自分の飲み代でもある酒を買って来て貰うことを昨夜更けてから宿の主人に頼んだのであったが、今朝未明に起きて湯に行くと既にその案内人が其処に浸っていた。顔の蒼い、眼の険しい四十男であった。

昨夜の時雨が其儘に氷ったかと思わるるばかりに、路には霜が深かった。峰の上の空は耳の痛むまでに冷やかに澄んでいた。渓に沿うて危い丸木橋を幾度か渡りながら、やがて九十九折の嶮しい坂にかかった。それと共に四辺はひしひしと立ち込んだ深い森となった。

登るにつれてその森の深さがいよいよ明かになった。