Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
「ドレ、俺も一疋釣らして貰うべい」
案内人もつづいた。
小舟にさおさして、岸寄りの深みの処にゆき、糸をおろした。いつとなく風が出て、日はよく照っているのだが、顔や手足は痛いまでに冷えて来た。沼をめぐっているのは例の黒木の山である。その黒い森の中にところどころ雪白な樹木の立ち混っているのは白樺の木であるそうだ。風は次第に強く、やがてその黒木の山に薄らかに雲が出て来た。そして驚くほどの速さで山腹を走ってゆく。あとからあとからと濃く薄く現われて来た。空にも生れて太陽を包んでしまった。
細かな水皺の立ち渡った沼の面はただ冷やかに輝いて、水の深さ浅さを見ることも出来ぬ。漸く心のせきたったころ、ぐいと糸が引かれた。驚いて上げてみると一尺ばかりの色どり美しい魚がかかって来た。私にとっては生れて初めて見る魚であったのだ。惶てて餌を代えておろすと、またかかった。三疋四疋と釣れて来た。
「旦那は上手だ」
案内人が側で呟いた。どうしたのか同じところに同じ餌を入れながら彼のには更らに魚が寄らぬのであった。一疋二疋とまた私のには釣れて来た。
「ひとつ俺は場所を変えて見よう」
彼は舟から降りて岸づたいに他へ釣って行った。