Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
御殿場から歩いてこの広大の野原を横断したのは一昨年の秋であった。野原いちめんの芒がほおけ、松虫草のすがれた十月であった。若草の伸び揃うた頃にもう一度この野の中を歩いて見度いとその時思ったのであったが、昨年は病気がちで果さず、今年もその春の頃をば空しく過ごして、いつのまにかすっかり夏めいた六月のはじめに漸くその望みを遂ぐることが出来た。
今度は裾野駅で汽車から降りた。そして其処からてくてく歩いて、野原の中の西寄りに在る唯一の集落須山村というまで、軽い傾斜を四里があいだ片登りに登って行った。
裾野駅はもと佐野駅と云った。その佐野の旧い宿場を出はずれる時が丁度十一時であったので其処で稲荷鮨を買って提げたが、程なく土ぼこりの立つ道を歩き歩き喰べて行った。心あてにした恰好な木蔭もなく、茶を貰って飲む茶屋らしいものにも行き会えそうになかったからであった。それでも一里ほどの間はとびとびに人家があり、やがてそれが絶えて一面の麦畑と桑畑との原となった。麦は半ば黄色に熟れて、諸所、刈っているのにも出会った。桑には小さな美しい実がなっていた。子供の時の記憶を思い出して、路ばたのそれを一つ二つと摘みとって喰べて見ると、ほほら温いうす甘いものであった。