Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
広い野を歩き尽してそのはての山の根に近づくなつかしさをばよく武蔵野で経験したものであったが、久しぶりに今日またそのしみじみした心持を味わった。杉の林を歩き抜けると、一握りにかたまった須山村があった。四方にめぐらした杉林は恐らく風を防ぐためであろう。秋の時に泊った清水館というに草鞋を脱いだ。
この前通された部屋は富士を仰ぐによかったが、今は繭買が入り込んでいてそちら側は全部ふさがっていた。反対の側の一室に入ると、今度は愛鷹の裏山の青々と茂っているのが真向いに見えた。並び立った若杉、渦を巻いて見える雑木の若葉、眼の覚める眺めであった。末広がりに広がり下った野の末には足柄箱根の連山が垣をなしてうす青く見渡された。
まだ時間は早かったが、塵に労れて散歩をする元気もなかった。障子をあけ放ってぼんやり煙草に火をつけていると、宿屋の軒下の庭には、伊豆あたりからでも登って来たらしい鰹節売が一杯に荷を拡げていた。そして其処も矢張り軽い坂をなした門さきの路を通る百姓たちを呼び留めては無理強いに一本二本と売りつけていた。多くは真青な桑を脊負ったままの百姓たちは大抵それをばにやにやと笑いながら受取って行き過ぎた。