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Japanische Klassiker mit Furigana

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みなかみきこう

みなかみ紀行

若山 牧水

Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme

Aozora Bunko

そんな山だけに樹という樹は大抵年代を経た古木であったに相違ない。うすべに色に浮んで見ゆるその山ざくらの花は多くふくよかな円みをもっていた。枝を張り渡した古木にみっちりと咲き静もっている花のすがたであったのだ。その円みを持った一団の花一樹の花が、うす黒い岩山の肌に其処此処に散らばって見渡さるる。北側だけに、山腹にはおおく日が昃っていた。そのうすら冷い日蔭に在ってもなおこの花だけはほのかに日の光を宿しているかの様に浮き出でて見えたのであった。

さくら花咲きにけらしなあしひきの山の峡より見ゆるしら雲

中学の文法の時間に、或る引例として引かれてあったこの古歌に無上の憧憬を覚えたのも矢張りそうした心を桜に対して懐いていたからであった。私の生れた処はそうした山奥であったために、その頃尋常小学だけしか村になかった。で、高等小学と中学とをば村から十里余り離れた海岸の城下町で学んだのであったが、その中学の寄宿舎に在って恋しいものはただ父であり母であり、その故郷の山の山ざくらの花であった。その頃、幼いながらに詠んだ歌にそのこころが残っている。

母恋しかゝるゆふべのふるさとの桜咲くらむ山のすがたよ