Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
た。或る日、案内せられて其処へ登ることになった。
登り三里の山路というので、病後で弱っている身体には少し気にもなったが、久しぶりに履きしめた草鞋の気持は非常によかった。四月十二日、天気もまた珍しい日和であった。
何しろ眼につく山ざくらの花である。温泉宿の附近はもうその頃はおおかた散っていたが、少し山を登ってゆくと、まだ真盛りであった。そして眼界の広まるにつれて、あちらの渓間こちらの山腹と、例のくっきりと縁をとって浮き出た様に咲き盛った一本二本の花の樹木がまったく数かぎりなく見渡された。東京あたりに多い吉野桜などは先ず遠く望む時にはいいが、近づいて見るといかにもこてこてと花弁ばかりが枝さきにかたまっていて、ともすれば気品に乏しい憾みを抱く。山ざくらは近寄って見たところもまことに好い。そのうす紅いろのみずみずしい嫩葉がさながらその花びらを護る様にもきおい立って萌えて居る。その中にただ真しろくただ浄らかな花がつつましやかに咲いているのだ。雨によく、晴によい。ことに私の好きなのはうららかな日ざしのもとに、この大木の蔭に立ってその花を仰いだ時である。この文章のなかに私はよく咲き籠る咲き静もるという言葉を使った様に思うが、それは晴れた日に見るこの花の感じがまったくそれである。