Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちからもち

力餅

島崎 藤村

Lesen Sie 力餅 (ちからもち) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 65.974 Zeichen · 130 Bildschirme

Aozora Bunko

古いことばに潮騒というのがありますが、海鳴りはその音でしょう。海の荒れる前か、あるいは海の荒れたあとかに、潮のさわぐ音でしょう。それは大きなほらの貝でも遠くのほうで吹き鳴らしているような音です。びっくりするような海の声です。わたしも東北の地方へ来て、初めてあんな音を耳にしました。

海といえば、わたしのような山国に生まれて深い森林の中に育ったものは、特別そちらのほうへ心を誘われます。そういうわたしは、相州鎌倉にも小田原にも、上総の富津にも時を送ったことがあり、西は四日市、神戸、須磨明石から土佐の高知まで行って見て、まんざら海を知らないでもありませんでした。しかし、布施さんといっしょに仙台から宮城野を通り、荒浜まで歩いて、見わたすかぎり砂浜の続いたところに出て行った時ほど、心を打たれたこともありません。

その時わたしは生まれて初めて大洋を望んだと言ってもいいほどに思いました。そればかりでなく、布施さんをそそのかしまして、その砂浜に着物をぬぎすて、二人して寄せくる波の間を泳いだこともあります。そのへんは海水を浴びに来るものがよく波にさらわれるところだと言われるくらいの岸でしたが、しかしわたしはただ大洋を望むだけにはまんぞくしませんでした。