Japanische Klassiker mit Furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme
「石川さん、今風呂で聞いたんですが、あしたA社の人は西穂高へ行くそうです。」「だってNとKとを連れて行かれたら、あとがこまる。」「火事場へ飛び込むようなもんだ。」……コッヘルを忘れるなよ。薪は小舎へ行って貰えばいい。米袋に穴が明いていた……
で、とにかく、それから十日たって、御登山は終えた。上高地は現在の上高地になる。昨日の昼すぎ、飛騨から中尾峠を越して入った上高地は、泣きたくなるくらい静かであった。帰るべき人は帰り、帰すべき人夫は帰した後の我々は、山の友人M君と、私が愛し且つ信頼している老案内勝野玉作と私との三人きりであった。清水屋もガランとしていた。五千尺もガランとしていた。そのガランとした五千尺の帳場に尊く見えるほど蒼白なMさんの顔を見出した時、「Mさん、帰って来ました」といった私の語尾は、我ながらいやになるくらい震えていた。あの焦躁と混乱との十日前にくらべて、これはまた何と静かな、秋の上高地なのであろう。疲れ切った私の神経には、堪え得ぬ程の静けさである。山の秋である。白樺の幹に抱きついて大声をあげて泣くか、明神池の藻の花の間に顔をつっこんで絶息する迄じっとしているか……三十を越して、二人の子供まである私は、子供が母に甘えるように秋の山に甘えたのである。