Japanische Klassiker mit Furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme
上高地は、ホテルが出来、自動車が通う今日よりも、徳本のバカツ峠を上下した昔の方が、煙が深かったような気がする。何度か越した徳本だが、別して、一度、長い辛い山旅を終り、もうすっかり静かになった上高地を後に、今は故人になった大町の玉作老人とここを越えた時は、一歩一歩に木の葉が散り、私はそれから出て行って生活せねばならぬ都会と、後に残して行く山との二つに、板ばさみになった自身の心を見出して、足は重かった。
針ノ木峠の小舎を根拠地に、蓮華、針ノ木、スバリ等の山遊びをした数日はたのしかった。朝晩こそ寒かったが、日中の空気はシャンペンのように甘く濃く、岩も日中はポカポカして、昼寝するには持って来いだった。この清澄の秋の空気に浮き上る山々は、槍も白馬も、まるで絵空ごとの如く美しかった。
高山植物は盛りを過ぎ、僅かにきばなのこまのつめが、偃松の根もとに咲き残るに過ぎなかったが、苺は触れるとポロリと落ちるまでに熟し、この上もなく美味だった。
針の木峠にいた時、満洲事変が突発し、わが国の情勢は一変した。私の身辺も、また大変化を来した。これを最後に、私は日本アルプスに行っていない。