Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

口を当てて吸い取ろうとして空しく努力しました。幾度口を当てて吸い上げても、お銀様の舌に磁石の力が備わっていない以上は、肉の中に残った針を引き出すことはできないのです。できないのをお銀様は、自棄に吸い上げ吸い上げしたものですから、滲み出る血を、すっかり口中に吸い取りました。紙を開いて、それを吐き出して見ると、白紙の上に牡丹の花を散らしたように真赤な血です。

その時に人の気配がして、いつのまにかお銀様の背後に立っていたのは、悪魔でもなければ、幸内でもありません。それは真蒼な面をした竜之助でありました。

お銀様はそれを見るや、

「お帰りあそばせ」

肉に食い入っている針のことは忘れて、喜び迎えました。

けれども竜之助は、お銀様が今まで何をしていたか、いま何をしたのだかを見ることができませんから、いよいよ冷然たる上に冷然たるもので、じっと突立っているうちにも、いつもと違っているのは、右の手に一本の尺八を携えていることです。

この人は今まで、どこに何をしていたのだろうということはお銀様もまだ尋ねはしません。竜之助もまたそれを語ろうともしません。尺八と刀とを荒っぽくそこへ投げ出した竜之助は、手さぐりして夜具をはね返すと、その中へもぐり込んで寝てしまいました。