Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「だが、それだけでもない」

日本人は「陰影」というものに敏感で、直射光よりも間接光、あけひろげた明るさより、遮蔽物によってやわらげられた光りを好んだ。生活の中に静寂の美をとりいれ、ぎらぎらした物は避けるという習慣があった。

「だからけとうのように石で建てた家の中で、靴をはいたままどかどかくらす、っていう生活にはなじめないんだな、なかなか」

「ふーん」と子供は仔細らしく首をかしげる、「そうだね、ぼくも石の家なんか好きじゃないな、寒いしさ、石の家なんかいやだな」

「それもさ、そうばかりも云えないんだよ、これが」父親は反省するように云う、「たしかに日本人には木造建築が合ってるけれども、こういう、木と泥と紙で出来てる家にばかり住んでるとさ、長いとしつきのあいだには、民族の性格までがそれに順応して、持続性のない軽薄な人間ができてしまうんだな」

父親はそこで欧米人の性格について語り、かれらの能力を支えてきたものは、石と鉄とコンクリートで造った家とか、靴をはいたまま、テーブルに向って食事をし、大きな宴会もする、という生活であると云った。

子供はその一語一語を注意ぶかく聞き、相槌を打つべきところへくると、さも感じいったように頷いたり溜息をついたり、唸ったりした。