Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
こうして二、三の肉料理について、父親はゆっくりと説明する。
彼の話は、それぞれの専門家が聞くと、読みかじりか聞きかじりに、自分の空想で色付けをしたものだと、すぐにわかるかもしれない。反対に、彼にそれだけの経験と知識があり、しかも或る程度まで恵まれた才能をもっていたのが、運の悪いためにどの方面でもうまくゆかなかった、というのが事実かもしれない。
彼はずいぶん広範囲にわたる話題の持主であり、子供はそのもっともよき聞き手であった。夕めしが済むと、あたたかい季節には小屋の外でくつろぐ。子供が道で拾っておく巻タバコの吸い殻を、手製の竹のホールダーに差込み、それを大事そうにふかしながら、また父親が話し、子供がそれを聞くのである。――子供が話し手にまわることも稀ではないが、二人とも現実的なことにはふれない。九分九厘までが観念的なことであり、空想や作り話と思えるものばかりであった。
もっとも判然としているのは、子供が母の話をせず、父親が妻とか家族関係の話をしないことだ。どんな事情があるにせよ、七歳ぐらいの子供なら、生死にかかわらず母のことが頭にある筈である。男もむろんそうだろうが、子供にとっては特に、母のイメージは心に深く刻みこまれているものなのだから。