Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

自分が妊娠していると聞かされたとたんに、かつ子の全身が固くちぢまり、躰液がしぼり出されて骨だけになるようにみえた。かつ子は口をあけ、歯のあいだから呼吸しながら、両手の指を力いっぱい握り緊めた。

「隠しておけることじゃないんだよ、どうにか始末をしなくっちゃならないんだよ、かつ子、誰だか相手を云っとくれ、え」

かつ子は答えなかった。伯母の言葉などは耳にはいらないのかもしれない。うつろになった眼で、前方の一点を凝視したまま、ふらふらと、伯母についてあるくだけであった。

おたねには相手の見当はついていた。日を繰ってみると、そのことのおこったのは自分の入院ちゅうであるらしい、そして夜なかの鼠騒ぎ。かつ子は夜も昼も休まずにはたらいているから、外でそんなあやまちをする隙はないが、家の中でなら機会はいくらでもある。ただ一つわからないのは、このところ五年以上も、京太が自分に触れず、女そのものを嫌い、避けとおしてきた点である。五十になるまではうるさすぎるくらい頻繁なうえに、安あそびをしたり、つまらない女にひっかかりして世話をやかせたものだが、その反動のようにぴったりと沙汰やみになり、呑み屋でも女っけのある店へは近よらないようになった。