Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
お座敷てんぷらの、白っぽく、上品にとりすました揚げかたは、ばちがいだと下町の客は云う。狐色よりやや濃い色に、ぱりっと揚げたやつこそ本筋で、もともとてんぷらなんてやつはげて物なんだ、ちかごろは職人も客もそいつを知らねえからな、などと云うのであった。
とらはその「天松」のてんぷらがひいきだった。大きな店ではない、間口三メートル、奥行六メートルほどの広さで、入口の右側が板場、左が細長い土間で、テーブルが五つ、椅子がそれぞれ三脚ずつ置いてある。四脚置くと通路がなくなるからで、食事どきにははいれない客が、よく店の前で順番を待っていた。
主人は五十五、六、痩せた背の高い男で、顔だちは五代目菊五郎にそっくりだといわれていた。もちろんずっと古い客の評が伝承されたので、いまでは五代目の顔など写真でさえ見ることはないが、そういわれればそうかと、客たちは思うのであった。――息子は二十六、七、色が白く、痩せていて、父親によく似た顔だちであり、父親と同じように無口であった。ほかに出前や雑用をする小僧が二人、奥のことは不明だが、店には女っけはなかった。
材料の買い出しから下拵え、揚げるのも客へ出すのも、この父子できびきびとやっていた。