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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「痛いな」岡田辰弥は聞きとれないほどの声で呟いた、「――弱ったな」

たんば老人は黙っていた。辰弥少年がやおら駒を進めても、黙ってタバコをふかしてい、辰弥も黙って盤面を見まもっていた。外は雨で、古い板葺き屋根を打つ雨の音が、かなり高く、そして間断なしに聞えていた。

「それじゃあだめだね」とたんば老人が忘れたじぶんに云い、盤面の駒を指さした、「この桂がはねたんだよ」

辰弥少年は指摘された点を見まもったが、いいや、やっちまえと呟いて、べつの駒を動かした。たんば老人は深い溜息をつき、タバコをふかした。それから暫くたって、老人は黙ったまま、盤面の一隅を指さして云った。

「角が当ってるよ」

「ええと、そうか」

辰弥は両手の指を揉み合せ、盤へのしかかるようにして、駒の配置をゆっくり眺めまわした。

「なんです」

辰弥は老人を見た。老人は喉の奥で忍び笑いをしていた。

「なんでもない、いまね、ひょっと治助さんのことを思いだしたんだよ」と老人は柔和な眼で少年を見ながら云った、「――あの男はなにをするにも、慎重に念を入れて考える癖があるんだよ、或るときこんなことを云ったよ」と老人はそこで声の調子を変えた、「――私はね、よくよくはらをきめてね、それがよかろうと思ったものだからね、めしを喰べることにしたよ」