Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lesen Sie 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) von 徳冨 蘆花 (とくとみろか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.742 Zeichen · 256 Bildschirme
鳶ありてその上をめぐりつ。南は栗の花咲きこぼれたる庭なり。その絶え間より氷川社の銀杏の梢青鉾をたてしように見ゆ。
窓より見晴らす初夏の空あおあおと浅黄繻子なんどのように光りつ。見る目清々しき緑葉のそこここに、卵白色の栗の花ふさふさと満樹に咲きて、画けるごとく空の碧に映りたり。窓近くさし出でたる一枝は、枝の武骨なるに似ず、日光のさすままに緑玉、碧玉、琥珀さまざまの色に透きつ幽めるその葉の間々に、肩総そのままの花ゆらゆらと枝もたわわに咲けるが、吹くとはなくて大気のふるうごとに香は忍びやかに書斎に音ずれ、薄紫の影は窓の閾より主人が左手に持てる「西比利亜鉄道の現況」のページの上にちらちらおどりぬ。
主人はしばしその細き目を閉じて、太息つきしが、またおもむろに開きたる目を冊子の上に注ぎつ。
いずくにか、車井の響からからと珠をまろばすように聞こえしが、またやみぬ。
午後の静寂は一邸に満ちたり。
たちまち虚をねらう二人の曲者あり。尺ばかり透きし扉よりそっと頭をさし入れて、また引き込めつ。忍び笑いの声は戸の外に渦まきぬ。一人の曲者は八つばかりの男児なり。膝ぎりの水兵の服を着て、編み上げ靴をはきたり。