Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lesen Sie 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) von 徳冨 蘆花 (とくとみろか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.742 Zeichen · 256 Bildschirme
九の三
まっ黒き木立の背ほのかに明るみたるは、月出でんとするなるべし。
父中将を首として、子爵夫人、加藤子爵夫人、千鶴子、駒子、及び幾も次第にベッドをめぐりて居流れたり。風はそよ吹きてすでに死せるがごとく横たわる浪子の鬢髪をそよがし、医はしきりに患者の面をうかがいつつ脈をとれば、こなたに立てる看護婦が手中の紙燭はたはたとゆらめいたり。
十分過ぎ十五分過ぎぬ。寂かなる室内かすかに吐息聞こえて、浪子の唇わずかに動きつ。医は手ずから一匕の赤酒を口中に注ぎぬ。長き吐息は再び寂かなる室内に響きて、
「帰りましょう、帰りましょう、ねエあなた――お母さま、来ますよ来ますよ――おお、まだ――ここに」
浪子はぱっちりと目を開きぬ。
あたかも林端に上れる月は一道の幽光を射て、惘々としたる浪子の顔を照らせり。
医師は中将にめくばせして、片隅に退きつ。中将は進みて浪子の手を執り、
「浪、気がついたか。おとうさんじゃぞ。――みんなここにおる」
空を見詰めし浪子の目は次第に動きて、父中将の涙に曇れる目と相会いぬ。
「おとうさま――おだいじに」
ほろほろ涙をこぼしつつ、浪子はわずかに右手を移して、その左を握れる父の手を握りぬ。