Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lesen Sie 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) von 徳冨 蘆花 (とくとみろか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.742 Zeichen · 256 Bildschirme
一の五
戦いは今たけなわになりぬ。戦いの熱するに従って、武男はいよいよわれを忘れつ。その昔学校にありて、ベースボールに熱中せし時、勝敗のここしばらくの間に決せんとする大事の時に際するごとに、身のたれたり場所のいずくたるを忘れ、ほとんど物ありて空よりわれを引き回すように覚えしが、今やあたかもその時に異ならざるの感を覚えぬ。艦隊敵と離れてまた敵に向かい行く間と、艦体一転して左舷敵に向かい右舷しばらく閑なる間とを除くほかは、間断なき号令に声かれ、汗は淋漓として満面にしたたるも、さらに覚えず。旗艦を目ざす敵の弾丸ひとえに松島にむらがり、鉄板上に裂け、木板焦がれ、血は甲板にまみるるも、さらに覚えず。敵味方の砲声はあたかも心臓の鼓動に時を合わしつつ、やや間あれば耳辺の寂しきを怪しむまで、身は全く血戦の熱に浮かされつ。されば、部下の砲員も乱れ飛ぶ敵弾を物ともせず、装填し照準を定め牽索を張り発射しまた装填するまで、射的場の精確さらに実戦の熱を加えて、火災は起こらんとするに消し、弾は命ぜざるに運び、死亡負傷はたちまち運び去り、ほとんど士官の命を待つまでもなく、手おのずから動き、足おのずから働きて、戦闘機関は間断なくなめらかに運転せるなり。