Japanische Klassiker mit Furigana
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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
Lesen Sie 山の人生 (やまのじんせい) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.022 Zeichen · 226 Bildschirme
白髪にして腰から上は裸、腰には帆布のような物を巻きつけていた。にこにこと笑いながら此方を向いて歩んでくる様子が、いかにも普通の人間とは思われぬ故に、かねて用心のために背に負う手裏剣用の小さい刀の柄に手を掛け、近く来ると打つぞと大きな声でどなったが、老翁は一向に無頓着で、なお笑いながら傍へ寄ってくるので、だんだん怖ろしくなって引返して遁げてきた。ところがそれから一月ばかり過ぎてまた同じ山で、村の若者が再び同じ老人に逢った。一羽の雉子を見つけて鉄砲の狙いを定め、まさに打ち放そうとするときに、不意に横合から近よってこの男の右腕を柔かに叩く者があった。振向いて見ればその白髪の老人で、やはりにこにこと笑って立っている。白髪の端には木の葉などがついていたという。これを見ると怖ろしさのあまり気が遠くなり、鉄砲を揚げたままで立ちすくんでいたのを、しばらくしてから村の人に見つけられ、正気になってのちにこの話をしたそうだ。眼の迷いとかまぼろしとか、言ってしまうことのできない話で、しかも作り話としては何の曲もなく、かつ二度の実見が一致していた。何かは知らずとにかくにそんな人が、この辺の山には正しくいたのである。