Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
だが、すべてを知ってみると、なんだかお母さんの事がかわいそうでかわいそうでならなくなる。このころ漸っとおれにはお母さんの事が身にしみて考えられるようになってきたのだ。……」
こんな場末の汚い寺の、こんな苔だらけの墓の中に、おまけに生前に見たこともないような人達と一しょになって、――と云うよりも、その佗びしい墓さえ、いまの私には、いわば、自分にとってかけがえのないものに思われた。
私はその墓を一巡してみた。そしてはじめて母の戒名がどこに刻せられてあるかを捜した。すると、墓の側面の一隅に「微笑院……」とあるのを見つけた。ほんとうを云うと、それを忘れていはすまいかと思ったが、その三字を認めるとすぐそれが思い出せた。その下方に大正十二年九月一日歿と刻せられてあるのが、気のせいか、私には妙に痛ましく感ぜられた。
私はいつか墓を一巡して、再び正面に立った。墓に向って左側に、一本の黄楊の木が植えられているが、いまはその木かげになって半ば隠れてよく見えなくなっている、一基の小さな墓がある。いつか妻と二人して、どうしてその子供らしい墓だけが一つ離れて立っているのだろうといぶかしんだ奴だが、それが私の小梅の父とおようさんとの間にできた子の墓なのであろう。