Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「ほいやっ、しっ!」
鞭がぴゅっと鳴った。馬は習慣的にどどっとふた足、三足を駆け出した。馬車はそして、ごとごとと平坦な道を走っていった。
「蔦や! おまえ、本当にどこへ行くつもりなの? え? 蔦や!」
紀久子はしばらくしてから訊いた。しかし、蔦代は依然として答えなかった。紀久子は繰り返した。
「どこへ行くつもりなの? 蔦や! おまえはそれをわたしにも言えないの? 蔦や! おまえは、わたしがおまえをどんなに思っているかってこと、おまえには分からないんだね。ねえ? 蔦や!」
「いいえ! それは……それは……」
「いいえ! 蔦やには、わたしがおまえをどんなに思っているかってことが少しも分かっていないんだわ。わたしはおまえを、ただの女中だなんて思ってやしないのよ。自分の妹か何かのようにして、なんでもおまえには、特別にしているのに、それがおまえには分からないんだわ」
「いいえ! お嬢さま!」
蔦代は唇を引き歪めながら、涙に濡れぎらぎらと光っている目を上げた。
「違って? もしわたしの気持ちが少しでも分かっていたら、わたしに何のひと言も言わずに黙って逃げていくってことはないはずじゃないの?」