Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
第八章
「それはそうよ」
彼らは馬車を見送りながら、話しつづけていた。
第八章
1
空は朝から群青に染めて晴れ渡っていた。風もなく、冬枯れの牧場には空気がうらうらと陽炎めいていた。紀久子と敬二郎とは馬に跨って、静かに放牧場の枯草の上を歩き回っていた。
「……どうもそれだけが、ぼくには頷かれないんだ。紀久ちゃんに限ってまさかそんな馬鹿なことはないと思うけれど、しかし他人の気持ちというものは、まったく分からないものだからなあ。それに、正勝の奴が……」
敬二郎は紀久子の馬のほうへ馬を寄せながら、声を低めて静かに言うのだった。その言葉はなにかしら、哀調というようなものをさえ含んでいた。紀久子はすると、狼狽してその言葉を遮った。
「それは敬さんの思い過ごしよ。わたし、正勝のことなんかなんとも思ってないわ。それは敬さんの思い過ごしなのよ。わたしがまさか、正勝をそんな風に思うはずはないじゃないの」
「それはそうだが、でも、紀久ちゃんがぼくには葉書一本寄越さないのに、正勝の奴へだけ手紙を寄越したり電報を寄越したりしていたものだから、正勝の奴は有頂天になっているんだよ」