Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「おれのことなんか心配するなったら!」
「だって……」
「それじゃ、帰り道にあの原始林にかかったら、隙を見て馬車から飛び降りるといいや。そして引っ返せば、ちょうどこの次の汽車に間に合うから」
「いいかしら?」
「構うもんか。おまえが馬車から飛び降りてしまったら、おれは馬車をどんどん急がせるから」
「でも、お嬢さまが兄さんに、捕まえておいで! っておっしゃらないかしら?」
「言ったって、だれがおまえを捕まえてきて苦しめるようなことをするもんか。おまえはおれのなんだ? そしていったいあの女はおれのなんだ? 心配しなくたっていい、構わねえからどんどん逃げてしまえ」
「では、わたしそうするわ」
蔦代は決心の表情を見せて、その小さな唇を固く引き結んだ。正勝は妹のその顔に見入りながら、長い鞭をしなしなと撓めた。
紀久子がそこへ戻ってきた。
「あら! よく逃がさなかったわね」
紀久子は微笑をもって言いながら馬車に乗った。蔦代も正勝も黙りこくっていた。そして、蔦代はまた目を伏せた。正勝は馭者台に直った。
「正勝! では、急いで帰りましょうね」
「ほいやっ、しっ!」
鞭が陽光の中にぴゅっと鳴った。