Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
次の瞬間、紀久子の唇は敬二郎の顔の上に、雨のように降った。
遣る瀬のない衝動がそして、敬二郎の死骸をさらに固く固く抱き締めさせた。
「お嬢さま! お嬢さま! 大変なことになりました」
だれか五、六人の人間が、ばたばたと駆けつけてきた。
「これを! 早く! これを!」
紀久子は帯の間から敬二郎と自分との二人の遺書を引き出して、狼狽している人々の前へそれを突き出した。だれかがその畳まれてある紙切れを受け取った。そして次の瞬間には、その手はすぐに紀久子の手を握った。
「お嬢さま! こんなところにいちゃ危ないです。火の子の降ってこないところへ!」
「構わないで! 構わないで! ただその手紙をなくさないでね。それには大切なことが書いてあるのだから」
「お嬢さま! とにかくあっちへ!」
「おまえは平吾だね! その手紙は確かにおまえに預けたよ。敬二郎さんとわたしとの手紙だわ」
紀久子はそう叫んで、次の瞬間にはぱっと身を翻して敬二郎の死骸を抱いたまま猛火の中へ飛び込んでいった。
真っ赤に空を焼いて火は燃え狂った。暗闇の中から大勢の人間が駆け寄ってくる足音が地を揺るがした。遠くのほうで犬が吠えだした。