Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
おれは見ねんだどもな」
「そのこと、ほんとなんですの?」
彼女は胸がどきっとした。考えてみるとこの瞬間、彼女の全身の血が夫に対する愛情と生活上の問題との間を、最大急行列車のピストン・ロットのように急速度の往復運動をしたのに相違なかった。
「人の話で、おれは見ねえんだどもよ」
「そんなことを言って驚かさないでください。松島はいままで本にばかり齧りついていて、工場には慣れていない人ですから、そんなことを言われると本当にしてしまいますわ」
彼女は雑役夫の言葉を否定した。それほどのことがあったのなら、工場から知らせてくれないはずはないと思ったからだった。
「だがよ、人の話だども、嘘じゃねえようだでな。なんでも、胴が味噌のようになっても、病院へ持っていくまではひくらひくらと動いていて、熊か何かのように唸っていたそうだで。そして、医者が腹から着物を剥がすべと思ったらよ、ひと唸りうんと唸って、それっきりだったという話なんだがな」
「おじさん! 本当のことなんですの? 本当のことなんですの?」
彼女はそう言いながら、赤ん坊を背負って雑役夫の返事を待たずに家を飛び出した。そして彼女は工場まで、背中の子供を揺すり上げ揺すり上げほとんど駆けつづけたのだった。