Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme
何とかしなくてはと思いながら、古い蚊帳の中に、樺太の女や、金沢の女達三人枕を並べているのが、何だか店に晒らされた茄子のようで佗しい。
「虫が鳴いてるよう……。」
そっと私が隣のお秋さんにつぶやくと、
「ほんとにこんな晩は酒でも呑んで寝たいね。」
梯子段の下に枕をしていた、お俊さんまでが、
「へん、あの人でも思い出したかい……。」
皆淋しいお山の閑古鳥。
何か書きたい。何か読みたい。ひやひやとした風が蚊帳の裾を吹く、十二時だ。
十月×日
少しばかりのお小遣いが貯ったので、久し振りに日本髪に結う。
日本髪はいゝな、キリヽと元結いを締めてもらうと眉毛が引きしまって、たっぷりと水を含ませた鬢出しで前髪をかき上げると、ふっさりと額に垂れて、違った人のように美しくなる。
鏡に色目をつかったって、鏡が惚れてくれるばかり。日本髪は女らしいね、こんなに綺麗に髪が結べた日にゃあ、何処かい行きたい。汽車に乗って遠くい遠くい行きたい。
隣の本屋で銀貨を一円札に替えてもらって故里のお母さんの手紙の中に入れてやった。喜ぶだろう。
手紙の中からお札が出て来る事は私でも嬉しいもの……。