Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
岡崎城は悩んでいる。
巷のうわさや、上層部の政策を、ほのかに洩れ聞く程度の知識ではあったが、藤吉郎は、非常な関心と興味をもって、
(――ここぞ松平元康の器量のわかるところ)
と、眺めているのである。なぜか彼は、その岡崎の城主松平元康という人に、人いちばい関心をもっていた。それは彼が諸国を漂泊中に、つぶさに岡崎城の士風だの、よく多年の艱苦欠乏や隷属的な侮蔑に忍耐して来た上下の実状を目撃しているせいにもよるが、もっと深い原因は、松平元康の通って来た今日までの経歴にあった。
(一国一城の主と生れても、自分以上に艱苦もし、不運な人も世にはいる)
と、その元康の境遇を人のはなしに聞いてから、深く心をひかれていたのだった。
しかもその人は、ことしまだ二十歳の若さと聞いている。桶狭間の合戦の折、義元の先手を承って、味方の鷲津、丸根の砦を墜したあの手際もよかった。
義元討たれぬ――と、知って、夜のうちに、さっと三河へ退いて行った退軍の態度もよかった。
織田の陣中でも、その後の清洲でも、元康の評はよいほうである。従ってよく話題にのぼる人物だ。――藤吉郎もまた、その元康の岡崎城が、やがてどういう方向をとるかなどと、独りそんな空想に耽っていた。