Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 197.228 Zeichen · 394 Bildschirme
五月十五日、生憎と、こよいは月がよく冴えている。つねならばもう梅雨雲の五月闇といわれる頃を。
「……強右衛門」
また、同役が四、五名して、板扉から顔を出した。そして、
「――いたのか。何でまた、明りを消したのだ」
と、怪しみながら入って来た。
そして自然、四角な月光の窓に眼を吸われると、みな口を閉じて立ち竦んだ。そこから一目に見える城下の大河――対岸の柵、甲州軍の黒々と野を蔽う陣地。
(あれを越えてゆくのか)
と、誰にも、その至難の大役が思いやられ、悲壮な決死行の門出にある友にたいして、餞別のことばもない心地に打たれたからである。
ひとりが、強右衛門のそばに、酒徳利をおいて、腰を落した。
「おい。すこしばかり、組頭にお願いして、いただいて来た。酒だ……お神酒だ。飲んで行ってくれ」
強右衛門は、酒が好きだ。つねには貧乏で飲めないし、近頃は糧食もない籠城中なので、なおさら酒を見ることも珍しい。彼は、友の好意に涙ぐんで、徳利へお辞儀した。
「かたじけない」
そして他の者へも、
「おい、坐れ。みなで飲もう」
いうと、人々は、
「何の、皆して飲むほどはないのだ。せめておぬしに一口と思ってようやく頂戴して来た酒。