Japanische Klassiker mit Furigana
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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
Lesen Sie 日本の諸国物語 (せっしょうせき) von 楠山 正雄 (くすやままさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.040 Zeichen · 158 Bildschirme
伊香刀美はびっくりして、
「ほう、えらい白鳥だ。」
といいながら、我を忘れてけわしい坂道を夢中で駆け下りて、白鳥を追い追い湖の方へ下りて行きました。やっと湖のそばまで来ましたが、もう白鳥はどこへ行ったか姿は見えませんでした。伊香刀美はすこし拍子抜けがして、そこらをぼんやり見回しました。すると水晶を溶かしたように澄みきった湖水の上に、いつどこから来たか、八人の少女がさも楽しそうに泳いで遊んでいました。
少女たちは世の中に何にもこわいことのないような、罪のない様子で、きれいな肌を水の中にひたしていました。伊香刀美は「あッ。」といったなり、見とれてそこに立っていました。するとどこからともなくいい香りが、すうすうと鼻の先へ流れてきました。そして静かな松風の音にまじって、さらさらと薄い絹のすれ合うような音が、耳のはたで聞こえました。
気が付いて伊香刀美が振り返ってみますと、すぐうしろの松の木の枝に、ついぞ見たこともないような、美しい真っ白な着物が掛けてありました。伊香刀美はふしぎに思って、そばへ寄ってみますと、美しい着物はみんなで八枚あって、それは鳥の翼をひろげたようでもあり、長い着物のすそをひいたようでもありました。