Japanische Klassiker mit Furigana
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がくせいものがたり
楽聖物語
野村 あらえびす
Lesen Sie 楽聖物語 (がくせいものがたり) von 野村 あらえびす (のむらあらえびす) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.667 Zeichen · 381 Bildschirme
あの聖らかな美しい音楽は、決して金のためなどを考える卑しい動機から生れ出る性質のものではない。
貧苦と不遇のうちに、モーツァルトの芸術を救ったものは、実に彼の強大なる自尊心であった。少年時代のモーツァルトが、「愛されること」を望んだのも自尊心の現れであり、青年時代にザルツブルクの卑しい地位に我慢の出来なかったのもまた自尊心の発露である。彼の心は小児の如く純粋で、いささかの妥協も、卑怯な譲歩も考えることが出来なかった。
「某公爵は、僕のような人間は百年に一度世に出るだけだと言った」――とモーツァルト自身が言っている。これは一応自慢らしく聞こえるが、実は甚だ謙遜した言葉であると言っても差しつかえはない。百五十年後の今日から見ればモーツァルトのような天才は、百年に一人どころか、千年に一人も生まれそうにないのである。
「君達は生れ変っても僕のようになれっこはないよ。それに比べると、君達の貰える限りの勲章を僕のものにするのは易々たることだ」――モーツァルトは驕慢な現世的な人達にこう言ったこともある。「従僕にしろ伯爵にしろ僕を侮辱したが最後、賎民だ」これもモーツァルトの自尊心の爆発した言葉であった。