Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
「なんの、なんの、そんな御斟酌には及びません」と探偵は、引いたカーテンを払いながら、愛想よく応酬した。私の坐ったところからは、灯の瞬いているバルセローナ港の全景が、一眸のうちに見渡せた。「会長さんとわかっていましたら、決してあんなことは申し上げなかったのですが、……ま、御容赦下さい! このところ連日遅くまでやっとりましたものですから、今日あたり少し早目に切り上げて、寛ごうかと思いましてなハハハハハハ」と蟠りなく探偵は笑ったが、デップリと肥えた血色のいい四十恰好の身体に快活な笑みを泛べ、柔和なしかしどうかすると鋭い光を放つその逞しそうな面を眺めていると、この人にこそは今の私の悩みを打ち明けても立ちどころに解決してくれそうな、何とも言えぬ力強い信頼感が胸に沸き起ってくるのであった。
「さあ、どうぞ、御用の筋を仰ってみて下さい。私の力で及ぶ限りは、お力になるつもりですから」と探偵は促してくれたが、しかし何と言っても事は妻の閨房に関したことであった。なかなか私の口からは言い出し得なかった。肚の中一杯に訴えたいことはありながら、それがどうしても唇へ出てこなくて私が言い澱んでいるのを見ると、探偵は微笑みながら黙って、壁に掛けてある数行の額縁入りの法律条項らしいものを見上げた。