Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いんじゅうトリステサ

橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇

橘 外男

Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme

Aozora Bunko

四

四

十一月九日。いよいよ雨季にはいってきた。なんという物侘しさだろう。明けても暮れても荒涼たる蛮土、そしてしとしとと小止みもなく降る雨。身体中の節々も溶けてしまいそうなくらい懶い暑さ。今日ふとここへ来てから何日くらいになるだろうかと指を折ってみた。早いものだ。もう一年と二カ月にもなる。倫敦の友達たちも、随分変わったろう。中にはもう結婚された方もあろう。子供のお母さんになられた方もあろう。そして私一人はと思うと、なんとも言えぬ淋しい気持がしてくる。ヴァイオリンなぞ弾いて気をまぎらわす。ふと気がつくと、ゴリラも凝乎と、檻の中から顔をよせて、聞き惚れている。

「マフチャズ! お前も退屈だわね。どうして世の中にお前のようなものがいるの? お前のようなものがいればこそ、父様はこうやって一生涯を棒に振って研究に熱中していらっしゃるし、私たちは倫敦へ帰ることもできないで、こんな山の中で日を暮していなければならないし……」

と檻の側へ寄って零したら、マフチャズも凝乎と聴き耳を立てているように思われた。昼過ぎからマフチャズの檻の前でマフチャズの写生なぞをする。もう油絵を描きたくても画布もないし、次便の来るまでには四カ月も間があるし。