Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
妻への答礼
さっきまではただ無意識に弾込めして腰に帯びていた拳銃を、改めてもう一度抜き出してしみじみとした懐かしみと信頼の念とを寄せずにはいられなかったのであった。そしてこの時ほど、私は今まで自分が脳中に蓄えてきた数百巻の財政学も数千冊の経済学も、ありとあらゆる学問も思想も、私を世に起たしめる上にこの鈍色をした拳銃一梃の持つ人生克服の威力、にすらも遠く及ばざることを感じたことはなかったのであった。
妻への答礼
すべての勤め人たちは、日曜よりも日曜を前に控えた土曜日の晩の方が楽しいという。そして私自身の経験によっても、子供の時分父がどこぞへ連れて行ってやろうと約束してくれた時には、その前晩の方が楽しくてなかなか眠れず、床の中でハシャギ廻っていたことを覚えている。ちょうど殺意を生じた後の、私のこの気持がそれと同様であったということができるであろう。
ハッキリと言うが……何度でもハッキリと繰り返すが、私の犯意は決して偶然でもなければ発作でもない。私にはそんな嘘偽りを述べ立てて、人の憐みを買おうという気持なぞは寸毫もない。私は実にかくのごとくにまで犯罪の前味を十二分に楽しんだのである。