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Japanische Klassiker mit Furigana

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いんじゅうトリステサ

橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇

橘 外男

Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme

Aozora Bunko

遺言状

もう一発また一発もう一発! どれこれの差別なく、手当り次第に私は犬の檻眼蒐けて放ちつつ梯子段を登った。登り詰めると起してあった揚げ蓋をパターンと閉じた。地底の喧騒と咆哮はたちまち海嘯のように遠ざかって、店の犬もまたキャンキャン啼き始めてきた。これにも一発くれようとしたが、すでに撃ち尽したのか引金を引いても弾は出てこなかった。私は積み重ねられた檻を眼蒐けて拳銃を叩き付けた。くるくると舞いながら拳銃は檻の背後へ落ちたのであろう、ドチャーン! と凄い音がした。そして烈しく耳を打ってくる足の下と、周囲の犬の啼き声に送られて私は表へ飛び出した。そして、朧な月の照らしている春の夜のさざめきの中へと紛れ込んでしまったのであった。

遺言状

翌る朝サンタルシアが丘の別荘の二階の寝室で、私が眠りから醒めたのは朝の五時前後くらいであったろうか、付近の森や木立はまだ乳を溶かしたような朝靄に閉じ込められて、深々とした暁の眠りのうちにあった。さすがに悪人とはいえ、人ひとり殺した後の眠りはそう快適なものとは言われなかったが、しかし世の中でよく言う殺人後の魘されるような後味なぞというものは、微塵も私の心には残らなかった。