Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
と妻は歯軋りせんばかりに身悶えした。急いで身を翻すと今度は枕許の卓上電話を取り上げた。
「ハハハハハハハ」と私はもう一度哄笑いした。
「かけるがいい。いくらでもかけるがいい! 線の切れた電話でかけられるものならいくらでもかけるがいい」
「この碌でなし……不具者! 色情狂!」と烈しい憤りに昂奮した妻はついにその誇称する伯爵夫人の身にもあるまじき乱暴な言葉を浴びせかけた。そして足摺りして眼を吊り上げた。召使は来ず電話架線は切られてもはや最後の手段に出る外はないと思ったのであろう、烈しく私を指さすと「悲哀!」と叫んだ。犬はムックと身を起して次なる主人の命令を待つかのごとく妻の眼を見上げながら前脚を揃えた。
「ドローレス! 眼を開けてようく見ろ! これが貴様には見えぬのか? これが」と私は初めて扉を離れて犬に向って拳銃を構えた。
「嗾けてみろ! 一言犬を嗾けてみろ! 犬もろとも一発の下に貴様を撃ち殺すぞ! ようく見ろ! 今夜の俺の顔を! 命が惜しくなくば犬を嗾けてみろ!」
凄まじい私の血相がようやく眼に留まったのであろう。朱を注いだ顔がたちまち蒼白に変じた。突っ立っている身体がワナワナと顫え始めた。