Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
もう誰もいない。マフチャズは私から瞬時も眼を放さない。私は逃げることもできない。どうなるのだろう、マフチャズは今私のそばで、死骸の側でスケッチ板に何か描いている。
また五、六行飛んで、前よりも一層大きな、ほとんど一字でノート一杯になりそうな烈しく震えた字で、
私は逃げたけれどもマフチャズにまた捕まった。誰もいない。寂寞身を切る、絶望だ! 父とアラン、パッカースンの屍体腐臭を発す。マフチャズ、傍で何か描いている……あれほど、馴れていたマフチャズは、逃げようとする私の気配を見て怒りを発する。私は殺されるかもしれない。
そしてこの日記はこの乱れを見せたままに終わっているが、死を遂げるまでの女主人公の運命が行間を伝わり字間を伝わって、惻々として私の胸を打ってきた。凄絶、凄惨言語に絶する日記とは、おそらくかくのごとき日記を指すのであろう。
読み終わってあまりのことに私は茫然としたのであった。しかし困ったことには前にも言ったとおりこの日記は、おそらくはこのエミーラなる女主人公が、初めは思い出を英国へ持ち帰るために毎日毎日克明に認めていたものらしいだけに、どこに一つ署名もなければ、事件が起った場所がどこなのだか、そして父博士や婚約者の苗字も、どこに一つ手懸りとなるべきものもないのであった。