Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
「へえ……あの夫人が自分でそんなことを仰ったのかね? ……へえ! これは呆れたもんだな!」口で言うばかりではなく実際呆れたように、男は一層繁々と妻の顔を見守っていたが、私もまた唖然として薄暗の中に白く浮いているキリッと引き緊った妻の横顔を眺めながら突っ立っていたのであった。いざとなると女というものは、こうも大胆に平気でスラスラと嘘が吐けるものなのかと、茫然としてただその横顔を眺めていたのであった。
「……見せていただけません?」
「へえ……見せるのはお見せしてもかまいませんがね……一体どちらから貴方がたはお出でになったんでしょうかね?」
「パセオ・デ・コロンからまいったんですのよ」と妻はまた平然として口から出任せの嘘を吐いた。「珍しい犬がいるって……ソレルの夫人から伺ったもんですからね、早速飛び込んで来ましたのよ、もう犬はいませんの?」
「あともう一匹だけ……いるにはいますがね」とオヤジは何か思案しながら、もう一度ジロジロと穴のあくほど妻の顔を眺め廻していた。
「……奥様は一体犬はお好きですかね?」
「……まあね」と妻は微笑んだ。「人一倍と言ってもいいのかも知れませんわね……これなんですの?」