Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
「早く開けないか、愚図愚図していると戸を蹴破るぞ!」
声が私だとわかっていたのか! わからなかったのか! ともかく、誰かがガヤガヤと扉の前で騒いでいると思ったのであろう。恐ろしく手間取った挙句やっとのことで中では、電気を点けて犬の唸り声やガチャガチャと鍵を廻す音がしてきたのであった。
「なぜそんなにお騒ぎになっていらっしゃいますの……?」
と妻は半醒半睡でいるらしくつい今し方ほどではなかったが、それでもまだ夢の中のように甘たるく言葉をかけながら扉を開いたが、扉が開かれるのと私が飛び込むのとがほとんど同時であったため、誰が飛び込んで来たかがわからなかったらしいのであった。しかも鎖を解かれて低い唸りを立てて今にも飛び蒐らんばかりの悲哀は、飛び込んで来たのが私とわかった瞬間、たちまち尻尾を股に挟んで哀しげな啼き声を挙げながら、寝台の下へ逃げ込んでしまった。
飛び込むと同時に、私はさっと寝台の背後の帷を引きあけた。そうしておいてすぐ窓の方へ走り寄って、この方もまた二カ所ばかりの重い帷をさっと引いてみた。寝台の上の深々とした羽根蒲団をパッと捲り挙げてみて、返す足で寝台の横手へ駈け込んで、大きな姿見の付いた衣装戸棚を全部あけっ放した。