Japanische Klassiker mit Furigana
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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.181 Zeichen · 219 Bildschirme
家の回りを歩いて、私が※(ローマ数字2、1-13-22)としるしをつけた北向きの座敷の前あたりへ来た時に――この部屋は杉の木に前を掩われて、陰惨な家全体の中でも殊に陰気くさく、昼間でも幽霊でも出て来そうなくらい、暗い部屋でしたが、この部屋の隅に黒光りのするのが横たわっていたのです。
「おや、あれはピアノじゃないですか?」
びっくりして私は足をとめました。
「誰のです? あれは」
「ここは旦那様のお部屋でして……」
と老爺を立ちどまりました。
「旦那様が帰んなすった時にお弾きになるでがす。旦那様アもう一つ名古屋にも持ってござらっしゃるだが、とてもお好きだで、ああやって大事にしまってあるでがす。お帰りになった時しょっちゅう鳴らしなさるだで」
「奥さん?」
「いんね、旦那様でがすよ」
「ほう、棚田さんがねえ、ピアノをねえ、ちっとも知らなかったが……へえ! ピアノをねえ!」
爺やの言うのには、昨年の暮れも棚田夫婦は半年も滞在していたと言うのです。自分はよくわからぬが、何かお役所で面白くないことでもあったとみえて、お役人を止めるとか止めぬとか……御夫婦で半年もここに暮していられたが、その間も旦那様は毎日のようにピアノに向っていられたというのです。