Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
一三 がま口
喧嘩の一件は、次郎に関する限り、それで終りだった。学校でも、正木でも、そのことについて、次郎にその後訓戒したりすることなど、まるでなかった。そして、権田原先生が、「いずれまた二人で話そう」と言ったことも、それっきりになってしまった。
次郎は何だか拍子ぬけの気味だった。
しかし、権田原先生が宿直室で言った言葉――というよりは、その言葉ににじんでいた先生の気持――は、その後、徹太郎の松の木についての話と共に、何かにつけ彼の心に甦って来た。そして、彼がいよいよ中学校にはいるまでの間、いくぶんかでも彼の心を正しい方向に鞭うっていたものがあったとすれば、それは、彼が、この二人の言葉と、運平老の蘭の絵とからうけた感銘であったにちがいない。
一三 がま口
ともかくも、こうして、一年近くの月日が流れた。
次郎にとって、それは、むろん、愉快な一年であったとはいえなかった。だが、いつも心を外に向け、喜びも、怒りも、悲しみも、すべて周囲の人々の愛情によって左右されて来た彼が、善かれ悪しかれ、自分というものに眼を向け出したことは、たしかに一つの進歩であったにちがいない。