Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
次郎が、そんな点で、ふだんから彼らにいくぶんの物足りなさを感じていたのはたしかだった。
しかし、きょうの物足りなさは、それとは全くちがった物足りなさだった。従兄弟たちの好意は十分にみとめながらも、それがしっくり身について来ないといった感じだったのである。
これは、しかし、実は不思議でも何でもなかった。彼は、彼自身ではっきり意識していなかったとしても、やはり、心のどこかで、まだ万年筆のことを思いつづけていたにちがいなかったのである。いや、万年筆をとおして、たまたま数時間まえに示された肉親の兄の愛が、久しく彼の血管の中に凍りついていた本能の流れを溶かして、従兄弟たちの好意を、その流の上に、木の葉でも浮かすように、浮かしはじめていたにちがいなかったのである。
血は水よりも濃い。そして濃い血は淡い血よりも人の心を濃くする。次郎が今日従兄弟たちの愛をいつも程に味わい得なかったとしても、それは決して彼の軽薄さを示すものではなかったのだ。
だが、実をいうと、次郎の気持を従兄弟たちから引きはなしていた理由は、ただそれだけなのではなかった。彼の心の動きはいつも単純ではない。