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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme

Aozora Bunko

俊亮はそのうしろ姿を見おくりながら、何か可笑しそうな、しかしいくぶん当惑したような表情をしていたが、その表情が消えると、すぐしんみりした調子で朝倉夫人に言った。

「何だかお別れするような気持がいたしませんね。」

「ほんとに。」

朝倉夫人は淋しく微笑した。お芳のえくぼが一瞬消えたように見えたが、彼女はそのまま台所の方に立って行った。

十分もたたないうちに朝倉先生は帰って来た。その時にはもう、卓にはいく品かのご馳走がならんでいた。ぬれたビール瓶やサイダー瓶の周囲に、トマトや、胡瓜やオムレツの色があざやかだった。

「永いこといて、一度も川にはいったことがありませんでしたが、すいぶんつめたい水ですね。」

先生はそう言って袴をはき出した。

「どうぞ袴はそのまま。」

と、俊亮が手で制すると、

「いや、行儀があまりよくない方ですから、袴をつけている方が却って楽なんです。」

座についてお芳にビールをついでもらいながら、先生はまた川のことを話題にした。

「この辺には水泳の禁止区域でもあるんですか。」

「いいえ、べつに。……何かあったんですか。」

「今、橋から一丁ばかりかみ手の方で、大ぜい泳いでいましたが、私の姿を見ると、しめしあわしたように、大いそぎで逃げ出してしまったんです。