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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

そして論旨を一転して青年の思想問題に入りかけたが、そのころからかれの言葉は次第にみだれがちになり、またしばしばゆきづまった。ゆきづまると、かれの視線はきまって空のほうにはねあがり、血走った白眼が大きく日に光った。そんなふうで、さらに五六分の時間がどうなりすぎたが、そのうちに、いくら空をにらんでも、どうしてもあとの言葉がつづかなくなってしまった。するとかれは、ちょっと肩をすくめ、右手をあげて耳のうしろをかいた。それからにやりと笑って胸のかくしから草稿を引きだし、大いそぎでそれをめくった。

そのあと、かれがふたたびもとの厳粛さと熱烈さをとりもどしたことは言うまでもない。それは、しかし、必ずしも草稿にたよれるという安心ができたからばかりではなかったらしい。というのは、かれの演説は決して単なる朗読演説ではなく、一つの句切りの最初の言葉さえ見つかれば、あとの数行は草稿なしでも自然に口をついて流れ出て来たし、そのあいだに、かれはかれの予定通りの厳粛さと熱烈さとを十分に発揮することができたからである。ただかれのために残念だったのは、かれの前にテーブルが据えてなかったことであった。