Japanische Klassiker mit Furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lesen Sie 死者の書 (ししゃのしょ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.340 Zeichen · 126 Bildschirme
其寂寞たる光りの海から、高く抽でて見える二上の山。淡海公の孫、大織冠には曾孫。藤氏族長太宰帥、南家の豊成、其第一嬢子なる姫である。屋敷から、一歩はおろか、女部屋を膝行り出ることすら、たまさかにもせぬ、郎女のことである。順道ならば、今頃は既に、藤原の氏神河内の枚岡の御神か、春日の御社に、巫女の君として仕えているはずである。家に居ては、男を寄せず、耳に男の声も聞かず、男の目を避けて、仄暗い女部屋に起き臥ししている人である。世間の事は、何一つ聞き知りも、見知りもせぬように、おうしたてられて来た。
寺の浄域が、奈良の内外にも、幾つとあって、横佩墻内と讃えられている屋敷よりも、もっと広大なものだ、と聞いて居た。そうでなくても、経文の上に伝えた浄土の荘厳をうつすその建て物の様は想像せぬではなかった。だが目のあたり見る尊さは唯息を呑むばかりであった。之に似た驚きの経験は曾て一度したことがあった。姫は今其を思い起して居る。簡素と豪奢との違いこそあれ、驚きの歓喜は、印象深く残っている。
今の太上天皇様が、まだ宮廷の御あるじで居させられた頃、八歳の南家の郎女は、童女として、初の殿上をした。