Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
路は悪かった。所々の水溜では、夫人の足がちらちら映る。真中は泥濘が甚いので、裙の濡れるのは我慢しても、路傍の草を行かねばならない。
停車場は、それあすこだからね。柵の中に積んだ石炭が見える、妙に白光に光って、夜になると蒼く燃えそう。またあの町の空を、山へ一面に真黒な、その雲の端が、白く流れ出して、踏切の上を水田の方へ、むらむらと斑に飛ぶ。が海を抱いた出崎の隅だけ朗かな青空……でも、何だか、もう一拭い拭を掛けたいように底が澄まず、ちょうど海の果と思う処に、あるかなし墨を引いた曇が亘って、驚破と云うとずんずん押出して、山の雲と一絡めにまた空を暗闇にしそうに見える。もっともそれなり夜になろうが、それだけに、なお陰気で、星は出そうにもなし、雨になると戸を閉めるから、遠い灯の影も見られなそうな夕暮だった。
(もう、お天気になりましょうね。)
(さあ、)
とは云ったがどうも請合いかねる。……明白に云うと、この上降続いちゃ、秋風は立って来たし、さぞ厭き厭きして、もう引上げやしまいか、と何だかそれが寂しかったよ。
風はなかった。稲葉がそよりともせぬ。けれども何となく、ざわついて海の波が響くようなは、溢れた水が田へ被るそれらしかった。