Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
装飾もなにもない、殺風景な部屋である。
「お待たせしました」
声をかけると、正造は眠りからさめたようにグッと頭を起して、三角の二重瞼を見張った。その眼光はギョロリとして凄じかったが、大きなまるい顔にはまったく血の気がなく、洗いざらした布のような疲れが見えた。木下が名乗ると、正造は若い彼にむかって、額をテーブルへすりつけて初対面の挨拶をした。やがて風呂敷包をといて新聞の切抜帳をとりだしながら、
「日夜の奔走で、新聞を見ている暇もない始末でして…」
独り言のように呟いて眉間に深い皺をよせた。彼がそうすると、心身の疲れが一時にそこへ寄り集るもののように見えた。正造は、足尾の鉱毒予防工事の不成績を書いた木下の記事について、わざわざ感謝の意を表しにきたのである。話の途中で正造は急に目を閉じると、
「脳が悪いので……」
そういっては頭を横にふった。その度に眉間に皺がよった。ときどき自分の話のつながりを自分で忘れてしまうらしい様子であった。過労だ。木下は心の裡にそう呟いて目を外らした。やがて正造は急に、誰かに肩でもたたかれたように、
「お忙しいところを」
倉皇と風呂敷を包みなおして腰を上げた。