Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
とある庭のある構えの内からよき襲をひからせた物好きな男が一人、銭乞うにはあらざるふうに細い笛を吹いて、生絹の顔をみつめていた。男の顔は粉のように白かった。小路の角で、母屋の見える庭では、もう、梅が枝をはじいて咲いていた。難波ではまだ蕾も固かったのに、みやこの日の暖かさを思わずにいられなかった。
その夜は宿の灯の下で、何やら先刻から大切なことを考え忘れていることに、気づいた。それを思い出そうとしたが、思い出せなかった。
笛を吹いていた男はまるで女のような顔立ちだった。そう思いおこしたときに宿の裏庭のそとに、笛は規則正しい孔に五本の指がしらを当てていることを知った。生絹は耳のなかに幾つも絵がひろがってゆくように、着いたばかりの京の町々をなつかしくも、思い描いた。
「片時もえ忘れじと思いしに、わたしはまるでいままで右馬の頭さまのことを一度も思い出さなかった。」生絹はそんな自分をふしぎに思った。旅の途中から帰ってゆくような思いに迫られたらどうしよう、とさえ、思いわずろうたほどだった。それだのに、舟から下りてからも唯の一度も右馬の頭のことを思い出さなかったのである。