Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくしんのふ
百唇の譜
野村 胡堂
Lesen Sie 百唇の譜 (ひゃくしんのふ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.209 Zeichen · 25 Bildschirme
千代之助は焼火箸を当てられたように大袈裟に飛上ります。
「まア、何んと言う声だろう、聞けばお前さんは、元は侍だったって言うじゃないの、どう間違って又そんな弱いお侍が出来たんだろうねえ」
「侍だって、抓られれば痛いよ。尤もあまり強くないから芝居者に身を落したんだ。これで剣術でもうまかった日にはお前なんか側へも寄せ付けない」
「呆れたねえ」
そんな事を言い乍ら、千代之助の手は羽織の紐を結んで、帰り支度を急しく運び、お梅の手は羽織の裾から、帯へ、胸へとまさぐり上げて、男の細面を双掌に挟んで、帰しも無い執拗な頬摺をくり返すのでした。
「お前さんは性悪だから、斯うしてどの女もどの女も、捨てて行くって言うじゃないの、他の女は知らないが、私を捨てたら承知しない」
「そんな事があるものかい」
「いえ、沢村千代之助の評判を知らないのは御本人のお前さんばかりさ、唇の手形を取られたら最後二度とお前さんに逢った女は無いって言って居るのをご存じかい」
「そんな馬鹿な」
「私は、とうとう昨夜、それを取られたんだから、もうお前さんに捨てられる番が来たんだねえ、それと知り乍ら、断わり切れなかったんだから本当に何んて馬鹿だろう」