Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
なにせい、私たち一座の者は、佐々木家に飼われているお抱えの芸人です」
「そ、そんな所に……なぜいつまで、飼われているのだ」
「たれがいたいことがございましょう。けれど、時節の来るまで、おとなしく、じっとそこにおれと仰っしゃったのは、高氏さま、あなたではございませぬか」
「なに」
「忘れもせぬ去年の初秋、右馬介どののお手引きで、小壺ノ浦で、うれしい半夜を、二人だけで語りました。その折の約束を、藤夜叉はついぞ破ったことはございません。……だのに、あなたはあれ以来、いちども会うては下さらず。二人の仲の不知哉丸も、無事に育っているのかどうか、それすら聞かしても下さらないではございませぬか」
彼女はもう場所がらも見得もなく、水干の袖に面をおおって泣くばかりであった。
そうだ。――不知哉丸。
ふたりの仲の子。
思えば、情痴の争いや涙の遊びだけで、事のすむ自分たちではなかったのだ。
高氏は、いまさらのように、かえりみる。
決して忘れ果てていたわけではないが、断ちきれないその鎹を、藤夜叉の口から今つきつけられて、初めて自己の“父”も実感されていたのだった。
「案じるな。……子のことは」