Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「これはどうだ!」
と、軍勢は笑いどよめいた。
「新田勢のあわてぶりよ。逃げるに急であとの舟橋を断り落して行く大事な退軍の常法すらも忘れている――」と。
が、尊氏は、
「はて? うかと渡るな」
と、全軍を待たせた。
そして附近の川小屋から土地の者数名を狩り出し、何で舟橋が無事にあったかを直々に質した。
すると彼らは。――これはつい四、五日前のこと。新田勢がさんざんな敗け軍のていでこの地へかかり、俄に村々へ合力を命じ、そのせつ架けおかれたもの、と前提して。
「まる二日二た晩は、馬やら兵が西へ西へ越え行かれましたが、てまえどもはまたこれへ呼びつけられ、やい聞け、われらの勢が渡りきったら、すぐさま舟橋を断り放ち、一そうの舟も附近に置いてはならんぞとの、ご厳命でございまする」
「む、新田がの」
「いえ、仰っしゃったのは、ご幕下のお方で……。すると、おん大将の新田殿は、それを聞いて橋の途中からお戻りになり、たいそうご機嫌のわるいお声で、お侍たちを叱ッておいでられました」
「叱ッた?」
「はい。おことばには、敗軍のわれらさえ架けえた橋を、断り落したとて何になろう。およそ、大敵に向う戦の始めなら、舟橋などは焼いて、背水の陣を布くという兵略もあるが、敗戦して落ちてゆく今、敵にもやすやす架け得られるものを毀して行っても益はない。